どーして会社を始めたのか(9)
社内の目は冷たいものでした。
今まで誰も成し遂げていないことをやっても、まわりは「当然じゃない?」と当たり前に言いました。支店長も同じように・・・
くぅぅ。あんたらに出来るのかよ!もう腹が立って仕方がなかった。
ただ腹が立っているだけでは仕方がないので、見返してやろうと北海道中を飛び回りました。
もう名だたる大手さんばかり回りました。さすが大手の生産技術は会話のレベルが高く、しかも私の師匠M氏もかなりレベルの高い人なので、その会話を盗んで自分の知識にしていました。そういうすごい人間と営業に回っていると、自然と営業力が身についてくるもので、気づいたら会社の歴史に名を刻むような偉業を達成していたのです・・・
ある半導体会社の工場は、ある商社が独占していて、前職の会社では一切取り合ってもらう事ができませんでした。もう何十年も。
私の目標の一つにその会社と取引を始めるというものがあり、何とか取り合ってもらうためにいろいろと方法を考えました。
他の系列工場には何度もお邪魔して、いろいろと困っていることに対して提案をしていたのですが一向に受注につながらない。たまたまお邪魔したときに、提案した事がヒットしたらしく、その話なら函館にしたら良いよという助言をいただきました。
お客様「お、その話なら函館が管轄だよ」
私「実は・・・函館は取引がなく行く事ができないんですよ」
お客様「そうなんだ。では私がつなげられるか聞いてあげようか?」
私「え?本当ですか!お願いします!」
数日後。函館工場の担当者様に連絡しておいたから、そっちからアポイント取ってくださいとの神の声が!即効で函館にTEL。生産技術のお偉いさんとのアポを取り付けました。
函館は札幌から片道300Kもあり、車で4時間ほどかかります。早速東京からM氏を呼んで遠路車を飛ばし、函館へ。
そこで私が得意としていたボールねじの話をすると・・・
お客様「おぉ!うちはボールねじですごい困っていたんだよ!なんでもっと早くからきてくれなかったんだよ(笑」
この日から、いろいろ提案してくれと言うことになり、私は毎週函館に通うことになりました。
私のようなペーペーは、利益も出ていないことに対してホテル代などの経費は使えないと独断で、朝5時に札幌を出発し、9時に現地入り。午前中は提案を行い、12時に函館を出発。室蘭の鉄鋼関係を回り、17時には帰社という鬼スケジュールをこなしていました。
ある日、
お客様「このグリース(油)をカムに塗って使うとすぐ機械が壊れるんだ。あの商社に進められて使ってるんだが、どうなってるんだよ?」
私「カム周辺の温度は何度ですか?」
お客様「120度くらい行くんだよ。かなり高速で駆動してるから」
私「え?グリースは何をお使いですか?」
お客様「○○だよ」
私「それは低温用ですので、この型番のグリースをつかわなければ焼き付を起こして壊れてしまいますよ!」
お客様「え?そうなの?商社はそんなこと教えてくれなかったよ」
私「すぐに試してみてはどうでしょうか?」
札幌に帰社すると、なんと見積もり依頼が。
特別に安くするわけでもなく、通常単価で提出したところなんと・・・
次回へ続く。