「農協」不要論にひとこと言いたい。

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昨年から安倍政権で議論になっているJA全中(全国農業協同組合中央会)の農協指導権「全廃」案の記事に対して、周りは農協は解体すべきだ!とか解体されれば良くなる!とかいう論調になっていますが、そもそもこの記事は「単位農協(総合農協や専門農協)」ではなくて「JA全中」の件であり、地方に存在する単位農協とは別の話です。

元はこの記事。

JA全中の農協指導権「全廃」案 政府、任意団体に 

政府は今月始まる通常国会に提出する農業協同組合法改正案の骨格を固めた。全国の農協組織を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)の指導・監査などの権限を3年で全廃して任意団体に転換する。JAグループ内でのJA全中の強制力をなくし、地域農協や農家が農産物の価格やサービス、流通経路を自由に競い合えるようにする。消費者も安価で魅力的な国産品を買える可能性が高まる。

記事はあくまで客観的にJA全中の農協指導権を撤廃するように動いていると書いているだけなのですが、どうもJAと付くとイコール単位農協というイメージがあるようなので、それは違いますよと。

で、書けば長くなるので、論点だけまとめました。

  • そもそも本件はJA全中に対する内容であり、単位農協解体については言及していない。
  • 記事の本質としては単位農協の自由度を増して競争力を高めることが目的だとかいてある。
  • JA全中とJA全農は別組織で違うもの。JAグループ=単位農協ではない。
  • 単位農協は全中の指導のもと、生産物を販売したり(全農や直接)、農林中金(金融)、共済の窓口を地域農家のために行っているもの。
  • JA全中の指導権をなくしても単位農協は無くならない。

んで、ここからは私の日本農業に対する主観です。私は専門家ではないので、細かい手法論などには触れません。

  • 私の結論から言えば単位農協は必要だと思います。しかし自由競争はもっと必要だと思います。
  • 課題の本質はすべて国の方針にあると思います。国が敷いたレール(法規制)に従って動いているわけですから、それに慣れた人たちが多すぎて、大きく変えるのが難しく、競争を促進できないということが問題なのだと思います。
  • つまりたとえば農地法改正などにより企業の参入を即すなどの新規参入を増やすのが良いと思います。
  • しかし、作るプロである農家が生産物を自分で販売することはできません。結果として流通は誰かが担わなければならないと思います。
  • それは商社が担えますが、農家は流通以外に生産という大切な仕事があります。生産は商社では支えることができませんので、今は農協の支えが必要です。
  • ある程度の生産量は維持しないと日本農業が破綻してしまいます。
  • いま日本の農業の中心が高齢者、農協を解体するとこれを切り捨てることになり、破綻します。
  • 競争原理から言えば破綻してもいいんじゃないの?輸入すればいいじゃん。となるが、いえいえ、外食するときに安心なものを選びますよね?国産が全くなくなったときに自分たちはなにを思うか。食の安全というのはこれからどんどん高まっていきますし、こだわった美味しいものを食べたいニーズもありますから、自国で作られた食品がなくなるということは市場ニーズを満たせなくなります。
  • 農業でもなんでも、結局はすべて市場、顧客がすべてであり、顧客がなにを求めているかから考えないとうまくいきません。現状ではその顧客より生産重視すぎる視点が問題ですが、自由競争が起きるということは顧客視点の企業が増えるわけであり、市場が拡大します。そのためにもある程度の保護による生産量確保も必要です。
  • 8兆円ある農生産高のうち半分しか農協で流通していないわけで、すでに農協外で立っている売り上げの方が大きいわけです。
  • そもそも大規模農家のように農協と関わらなくても規模拡大できる経営体が増えているのも事実です。つまり既存の農業を守りつつ、新しい市場参入を即して市場を拡大するために、参入障壁になり得る法や仕組みを改正してしまうのが良いと思います。

あと関係ないですが、

  • 兼業農家の方が数が多いわけですが、兼業農家と専業農家の権利を同一に見るのは公平ではないと思います。あと規模によっても。経済は平等ではなく公平だと思うので、ここの仕組みを変えるべきじゃないかと。
  • よく補助金漬けが問題だとか言うと思いますが、一度その仕組みを作ると変えるのはとても大変だと思います。重要なのはことの本質を突くことであり、表面に出ている問題だけ槍玉にあげても仕方ないと思います。
  • ロボット化やIT化をいま進めて補助金出しても生産性は絶対に上がりません。断言できます。なぜならいまの農業IT技術はセンシングやロガー中心なので、そこから経営効率を上げるためには農家自身の「数値意識」を変えていかないと無理です。しかしフルオートのトラクターなど本来人間がやるべきではない作業が自動化される時代が来ればこの限りではありません。

最後に、文句ばかり言っているように見られると癪なので、我々が取り組んでいることを。

  • Farmnoteは農家の生産性向上を支援することがビジョンです。ぜひ以下の記事を御覧ください。
    Farmnoteのビジョンと、大切にしている3つのこと。
  • 大規模農家は我々のようなソリューションを活用して大いに利益を上げていただければと思っています。
  • 小規模農家は単体でFarmnoteを導入しても大きな効果が出づらいため、面で支えていけるようなソリューションを提供していきます(今は詳細はお話しできません・・・)
  • つまり、既存の仕組みの中でも生産にフォーカスして、高い生産性を実現するために市場に答えを提供していきます。
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