スタートアップの資金調達におけるデッド・銀行取引の重要性

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スタートアップへ理解を示してくれる銀行との取引というのはとても大事だというお話。

私はスカイアークのような13年企業とファームノートのようなスタートアップと両方経営するという珍しい体験をさせてもらっている。

ファームノートは、センサーの発売を前にして在庫確保や製造費用など大きめの運転資金が必要となり資金調達に動いている。

その中で思ったのが、よくスタートアップあるあるなエクイティ一点張りで成長するぜ!的な調達だけでなく、うまくデッドを混ぜていく調達の多様性というのはとても大事だと実感している。

エクイティは未来の成長に対して投資してもらうが、おたくの会社の未来価値はこれくらいだよねと評価してもらいバリュエーションがついてしまえば、次の調達タイミングではよりすごい未来を説明できないとバリュエーションは上げられないし、大きくダイリューションさせて調達するしかなくなる(初めからすごいバリュエーションがつけられれば別だが)。

一方、デッドは短期的な成長に対して貸し出してくれる。逆にいうと赤字タラタラで短期的な未来が確約できないようなところには銀行は貸し出さない。だからスタートアップはデッドの重要性を軽視している風潮があるような気がする。そもそもうちは銀行取引しないよ、エクイティでガンガン行くぜ!と。

しつこいが13年経営してきて、調達の多様性を持つことはとても重要だと思っていて、様々な手段で調達できる環境を用意しておく、つまり「やべー!倒産する!どうしよう!」となりそうな時に手を差し伸べてくれる人をどれだけ増やしておけるかはベンチャーでは特に力を入れないといけない。

スカイアークはいままでとにかく銀行の取引を重要視してきた。定期的に支店長に事業報告をしてきたし、もちろん返済は遅らせたことは無い。返済が滞りそうなリスクがある場合は即座に報告をして信頼を得る努力をしてきた。

ある時は赤字決算が確定して決算書が出る前に仮決算を作って理由を説明しに行ったことがある。その時支店長は私の話を聞いてくれたあとに、ニコニコしながら「誰に入れ知恵された?普通は決算終わってから赤字を報告に来るものだぞ」と。今回の赤字はなかったことにするから今年一年がんばって利益出してくれ、と後輩のように可愛がってもらった。

ある時うちのメインバンクに対して結構な金額の赤字決算を報告に伺った。あぁ、信用失うかなと心配しながら説明していたら、支店長から当座貸越の枠余ってまってるから借りれるなら借りてよ、こんなときだって経営にはあるんだからいつだって応援すると。その後、本当に資金繰りに困ったときには真っ先に検討して資金を貸してくれた。

うちはメガバンクにも口座があるが、普通なら貸し出さないような企業規模のうちの会社にも快く貸してくれた。その時の支店長は未だに飲みに誘ってくれるし、いろいろ相談に乗ってもらっている。

今回、ファームノートの資金調達はエクイティ中心に調達する予定だったが、途中からデッド中心に軸足を変えた。つまり短期的な資金はデッド、長期的な成長資金はエクイティと方針を変えた。

なぜ方針を変えたかというと、スカイアークのメインバンクがファームノートの運転資金を全面的に支えてくれると申し出てくれたからだ。確かにいまは銀行の貸出先が少ないのは事実だと思うが、スタートアップのアーリーステージで赤字だらけの普通じゃないBSによく貸し出してくれたなととても感謝しているし、かなり珍しいと思う。

このときに思ったのが、スカイアークで13年積み重ねてきた信用がなければ、つまり銀行との取引を愚直に対応してこなければ、今回のこの話は間違いなくなかった。

当然のことながら銀行は回収の見込みが高いからこそ貸し出す。しかし過度にリスクを取らないということではなく、社長の人柄や事業成長性を評価する部分もあると思う。

だからスタートアップへ理解を示してくれる銀行との取引というのはとても心強いものだと思う。そのためにも初めから銀行取引はしない、と決めつけるのではなく、積極的に銀行と取引をして信頼を積み重ねておけば、いざという時に手を貸してくれると思う。

とにかくスタートアップは死ななければ、必ずチャンスは回ってくる。とにかく死なないためにも、必要な時にお金が調達できる環境をいかに作れるかにかかってくる。

もう銀行とはちゃんと取引しているよ、というスタートアップははもちろんあると思うが、まだ銀行ともほとんど接触したことが無いという方はぜひお勧めしたい。

というか、ファームノートはぶっちゃけスタートアップじゃ無いよな笑

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